今日は2作紹介します。
「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」2作からなる「硫黄島の戦い」。
監督はどちらもクリント・イーストウッド。
主な出演者はライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、そして渡辺謙、二宮和也。
同じ監督の作品だから2作まとめてというわけではなく、これらは「2作とも観て初めて1本の物語として完成する」作品だから2作まとめてのご紹介です。
恐らく「硫黄島からの手紙」しか観ていない人が多いのではないだろうか。
まあこちらからしたら負け戦なわけだし、敵さんの勝つところが観たい人なんてそうそういない。
しかし、ぶっちゃけるとそんなに華々しい活躍が描かれてるわけではない。
有名な擂鉢山に星条旗を立てる写真。
あの写真がかなり印象的だったため、写真に写っている兵士を探し出して英雄扱い、戦時国債キャンペーンのマスコットにされる。
本人たちは決してそうではないのである。
それは勇敢に戦った英雄ではないということではなく、自分たちだけが英雄ではないのだ。
懸命に戦い、命を落とした者もいるわけで、自分たちだけが持て囃される状況に戸惑う。
たった一枚の写真に写っただけで。しかも新聞に掲載されたのは撮り直した二枚目。
そんな感じで、硫黄島を象徴する一枚の写真に写った兵士たちのその後が描かれる。
「硫黄島からの手紙」は説明もいらないだろう。
こうして「硫黄島」という1つの島を舞台にした作品を、日米双方の視点から描くという大変画期的な試みがされているのである。
作品の出来云々以前にこれをやろうとしたその心意気だけで賞賛されるべきである。
日本じゃ絶対、ぜっっっっっったいに出来ないことだ。
そして「戦争に英雄なし」が信条のイーストウッドが描くこの作品は、星条旗を掲げた兵士はもちろん、栗林中将ですら英雄的には描かれていない。
ただそこがどんな場所であるか、72年前に何がそこで起きたのかが描かれているだけである。
どちらか片方しか観ていなければ、アメリカに対しては何となく攻め込んできて侵略しやがった連中、日本に対しては得体の知れないクレイジーなサイコ軍団くらいのイメージしか湧かないだろう。
両方観ることによって、初めて双方の背景を窺い知る事が出来る。
客観的視点に立つ上で非常に大切なことである。
とにかく、言える事は「両方とも観るべし」、その一言である。