今日は戦時下における国内の出来事「海と毒薬」
1986年、熊井啓監督作品。
大東亜戦争末期、九州の某大学にて捕虜の米兵が臨床実験の被験者として使用された実際の事件を題材にした作品。
淡々とした演出、不気味な感じを醸し出すピアノがなんとも言えない感じを出している。
モノクロなのも相まって、手術シーンがリアルで恐ろしい。
患者が死亡した後、ヒグラシの鳴く声が入るがそれが虚しさを掻き立てる。
大戦末期、日本の都市はほぼ焦土と化している状態。
もう山ほど人が死んでるんだ、ましてや米兵である。
今更何人か死んだところで誰も何とも思わないだろう。
どうせ負けるんだから…
そんな精神状況で、無感情の機械のように実験を行っていく。
大変に恐ろしく狂気に満ちている。
劇中、ある医者は
「戦争中にこんな病院にいたから捕虜を解剖したのさ。我々を糾弾する連中も同じ立場になったらどうするか分らんぜ。」
と語る。
これは何というか…戦争はかくも人間の精神を狂わせるかと戦慄する。
あの時は国全体がおかしかったと言えば納得してしまいそうなのも恐ろしい。
内容の衝撃と淡々とした演出のおかげで、何とも言えないとても異様な作品。